「するにあたり」の言い換えから学ぶ!場面別つなぎ表現の選び方と例文

「プロジェクトを開始するにあたり」「サービスを利用するにあたり」。

キーボードを叩きながら、少し堅苦しい、あるいは大げさすぎると感じて指が止まった経験はないでしょうか。

「するにあたり」は、ビジネスシーンでよく使われるつなぎ表現ですが、「する前に」「する上で」「する際」などへ言い換えることで、文章の温度感や相手への伝わりやすさが劇的に変わります。

状況に応じてどの言葉を選ぶべきか。意味の違いやニュアンス、すぐに実務や文章作成で使える言い換え候補と例文を詳しくお伝えします。

  • 日常的な業務や依頼:「する際」「する前に」「する上で」が自然
  • 重要なイベントや公式な場:「するに際して」「先立ちまして」が適任
  • マニュアルや手順書:「する場合」「するにあたって」で客観的に

「するにあたり」の言い換え表現を一覧で紹介

「するにあたり」は、物事を始める直前の準備や、何かに向かう心構えを示す言葉です。まずは、場面や相手のトーンに合わせて、すぐに使える代表的な言い換え候補を紹介します。

まず使える言い換え候補

日常のメールから改まった挨拶まで、状況に応じて以下の言葉を使い分けることで、不自然な硬さを和らげることができます。

  • する際(さい):最も汎用性が高く、日常業務で使いやすい表現。
  • する前に(まえに):時間的な前後関係をシンプルかつ明確に伝える。
  • する上で(うえで):条件や前提、重要性を強調したいときに適格。
  • するに際して(さいして):特別な行事や重要なイベントに向かうときに使う。
  • 先立ちまして(さきだちまして):公式な挨拶や進行の事前準備を示す。
  • する段階で(だんかいで):プロセスの一部であることを客観的に示す。
  • する場合(ばあい):条件設定やマニュアルなどで事実を淡々と伝える。
  • するにあたって:少し口語的で、社内や親しい間柄で使いやすい。

ニュアンスと場面別の言い換え早見表

それぞれの候補が持つニュアンスと、適した使用シーンを比較してみます。

言い換え候補 ニュアンス・特徴 適した使用シーン
する際 単なる時間点を示す。感情を含まずフラット。 社内メール、簡単な依頼、日常業務
する前に 事前の行動や準備を促す。具体的で分かりやすい。 マニュアル、注意喚起、顧客への案内
する上で 目標達成のための前提条件や重要性を強調する。 企画書、提案書、方針の説明
するに際して 特別な出来事や重要な局面に直面している感覚。 公式な文書、重要な契約、式典
先立ちまして 本題や本番に入る前の、準備段階であることを示す。 プレゼン冒頭、スピーチ、司会進行

「するにあたり」の言い換えを選ぶポイント

無数にある言い換え候補の中から、その場に最も適した言葉を選ぶためには、3つの判断基準を持っておくことが大切です。

前後関係、出来事の重み、そして相手との距離感を見極める手順を整理します。

  1. 時間軸が「事前」か「同時進行」かを見極める
  2. 出来事の「重要度(特別感)」を測る
  3. 相手との距離感(フォーマルさ)に合わせる

1.時間軸が「事前」か「同時進行」かを見極める

まず、これから伝える内容が、行動の「前」に必要なことなのか、行動と「同時」に必要なことなのかを考えます。

「システムの移行をするにあたり、データのバックアップをお願いします」。この場合、バックアップは移行の「前」に行うべき作業です。であれば、「システムを移行する前に」や「システム移行に先立ちまして」と言い換えたほうが、受け手は行動の順序を間違えません。

一方、「システムを利用するにあたり、パスワードを入力してください」であれば、利用と入力はほぼ「同時(直前)」です。この場合は「ご利用の際は」や「ご利用時には」とするほうが自然に響きます。

2.出来事の「重要度(特別感)」を測る

「するにあたり」は、言葉自体に少し大げさで重たい響きがあります。

日常のちょっとした会議の案内で「会議を開催するにあたり、資料を添付します」と書くと、少し仰々しい印象を与えてしまいます。この程度の重要度であれば「会議の開催に際し」や、もっとシンプルに「会議用の資料を添付いたします」で十分です。

逆に、会社の創立記念式典や、大規模なプロジェクトのキックオフなど、特別感を出したい場面であれば、「するにあたり」や「するに際して」という重たい言葉がしっくりと馴染みます。出来事のスケールに合わせて言葉の重量を調整してください。

3.相手との距離感(フォーマルさ)に合わせる

文章を読む相手が誰なのかによっても、最適な表現は変わります。

親しい同僚や後輩に「業務を引き継ぐにあたり」とチャットを送ると、距離を感じさせてしまいます。「引き継ぎをする上で」や「引き継ぐ前に」と柔らかく開くほうが、円滑なコミュニケーションにつながります。

一方で、初めてやり取りをする取引先や、目上の方に対するメールであれば、「〜するにあたりまして」や「〜するに際しまして」と、敬語表現を組み合わせることで、相手への敬意と誠実さを示すことができます。

「するにあたり」の意味とニュアンスを深掘りする

言葉を正確に使いこなすためには、そもそもの語源や意味の輪郭を捉えておくことが大切です。「するにあたり」という言葉の裏にあるニュアンスと、混同しやすい類語との違いを見ていきましょう。

「するにあたり」が持つ基本的な意味

「するにあたり」の「あたる(当たる)」には、物事に直面する、対峙する、向かい合うという意味が含まれています。

つまり、単に時間が経過してその時が来たというよりも、「今からその重要な事柄に向かっていく」という、書き手の姿勢や心構えが表れる言葉なのです。

だからこそ、日常の些細な業務に使うと違和感が生じ、大きな決断や新たな門出の場面で使うと、強い説得力と格調高さを生み出します。

「する際」「するに際して」との決定的な違い

似たような場面で使われる「する際」や「するに際して」とは、どのような違いがあるのでしょうか。比較してみます。

表現 意味の焦点 ニュアンスの違い
するにあたり 事に向かう「姿勢」 準備や心構えなど、事前の積極的なアクションに焦点が当たる。
する際 単なる「時間点」 「〜の時」と同じ意味。感情や特別感はなく、客観的でフラット。
するに際して 特別な「機会」 「するにあたり」と似ているが、より行事やイベントの色合いが強い。

例えば、「退職するにあたり」と言えば、退職へ向けた準備や挨拶回りをしている情景が浮かびます。

これが「退職する際」であれば、単に「辞める時」という事実を指します。

「退職するに際して」となれば、退職という出来事をひとつの大きな節目として捉えているニュアンスが強くなります。伝えたい情景に合わせて使い分けてください。

よく使われる動詞別の言い換えバリエーション

「するにあたり」の前につく動詞によっても、しっくりくる言い換え表現は変わってきます。実務で頻出する動詞との組み合わせと、その最適解を見ていきましょう。

「利用するにあたり」の自然な言い換え

サービスやツールの利用を促す場面です。顧客に向けたマニュアルや規約でよく登場します。

「当サービスを利用するにあたり、以下の規約をお読みください」

この表現は決して間違いではありませんが、少し威圧感や事務的な冷たさを感じさせます。

「当サービスをご利用いただく前に、以下の規約をお読みください」

「当サービスをご利用の際は、以下の規約をご確認ください」

このように「前に」や「際は」と言い換えるだけで、顧客に寄り添うサポートの姿勢が伝わる柔らかい文章になります。

「作成・開発するにあたり」の自然な言い換え

企画書や仕様書、社内の稟議書などで、何かを作り上げる過程を説明する場面です。

「新システムを開発するにあたり、セキュリティ要件を見直しました」

この場合、開発を成功させるための「前提条件」を強調したいはずです。

「新システムを開発する上で、セキュリティ要件を見直しました」

「新システムの開発に先立ち、セキュリティ要件を見直しました」

「する上で」に置き換えることで、その作業が不可欠なプロセスであることが論理的に伝わります。

「開始・開催するにあたり」の自然な言い換え

イベントの司会や、プロジェクトのキックオフミーティングでの挨拶など、人前で話す場面です。

「本日の会議を開催するにあたり、一言ご挨拶申し上げます」

少し定型文のような印象を与えてしまいます。もう少しフォーマルで洗練された表現に変えてみます。

「本日の会議開催に先立ちまして、一言ご挨拶申し上げます」

「プロジェクトの開始に際しまして、皆様に御礼申し上げます」

「に先立ちまして」や「に際しまして」を使うことで、言葉に重みと公式な響きが生まれ、聞き手の姿勢を正す効果があります。

「検討・判断するにあたり」の自然な言い換え

複数の選択肢から何かを選ぶときや、議論を進める場面です。

「導入ツールを検討するにあたり、コストを最優先しました」

この場合は、思考のプロセスや基準を示す言葉に置き換えるとスムーズです。

「導入ツールの検討段階において、コストを最優先しました」

「導入ツールを判断する基準として、コストを最優先しました」

「検討段階において」や「判断する基準として」と具体化することで、読み手はなぜその結論に至ったのか、背景を理解しやすくなります。

「するにあたり」のシーン別言い換え例文

ここまでの内容を踏まえ、具体的なシチュエーションにおいて、どのように言葉を置き換えるべきかを見ていきます。

ビジネスメールでの依頼や報告

社内外を問わず、日常的な業務連絡や依頼を行う場面です。大げさな表現を避け、シンプルに伝えることが重要です。

「明日の打ち合わせをするにあたり、事前に資料をご一読ください」

これは少し硬すぎます。日常業務であれば、もっとフラットで構いません。

「明日の打ち合わせに先立ちまして、事前に資料をご一読いただけますでしょうか」

「明日の打ち合わせの前に、事前に資料へ目を通していただけますと幸いです」

このように言い換えることで、相手にプレッシャーを与えずに依頼を通すことができます。

上司や取引先への改まった連絡

重要な報告や、目上の方に対する丁寧な連絡が必要な場面です。敬意を示しつつ、正確に情報を伝えます。

「新規契約を締結するにあたり、いくつか確認事項がございます」

契約という重要な局面であれば、「するにあたり」を使っても問題ありませんが、より丁寧な敬語表現に整えます。

「新規契約の締結に際しまして、いくつか確認事項がございます」

「新規契約を進める上で、事前にご確認いただきたい事項がございます」

相手の時間を頂戴することへの配慮を込めた表現に昇華させます。

スピーチや挨拶でのフォーマルな表現

結婚式、入社式、あるいは大規模なプレゼンテーションなど、大勢の前で話す改まった場面です。

「本プロジェクトを発足するにあたり、多くの皆様にご尽力いただきました」

声に出して読むスピーチ原稿であれば、耳で聞いてスッと入る、響きの美しい言葉を選びます。

「本プロジェクトの発足に際して、多くの皆様に多大なるご尽力を賜りました」

「本日の発表に先立ちまして、まずは関係各位に深く御礼申し上げます」

格調高い言葉の響きが、その場の空気を引き締めます。

日常会話や社内チャットでのカジュアルな表現

親しい同僚やチームメンバーとの、スピード重視のコミュニケーションの場面です。

「来週の出張をするにあたり、ホテルを予約しておいて」

チャットでこのような硬い言葉が来ると、少し冷たい印象を受けます。

「来週出張に行くから、事前にホテルを予約しておいてくれる?」

「来週の出張の件で、ホテルの手配をお願いしていい?」

「するにあたり」という接続詞自体をなくし、口語的な表現に砕くことで、チーム内の心理的安全性を保つことができます。

「するにあたり」の言い換え例文とNG表現

言い換え前と言い換え後の比較、そして避けるべき誤用やNG例を確認しておきましょう。

自然に伝わるOK例文と言い換え前後の比較

文脈に合わせて適切に言い換えられ、文章がより洗練されたOK例です。

  • 【変更前】デザインを制作するにあたり、ターゲット層を明確にしました。
  • 【変更後】デザインを制作する上で、ターゲット層を明確にしました。(前提条件であることを強調できている)
  • 【変更前】システムを導入するにあたり、パスワードの設定が必要です。
  • 【変更後】システムの導入前に、パスワードの設定をお願いいたします。(行動の順序が明確で分かりやすい)
  • 【変更前】新年を迎えるにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
  • 【変更後】新年を迎えるに際しまして、一言ご挨拶を申し上げます。(お正月という特別感とフォーマルさが際立つ)

避けたいNG例と誤用しやすいポイント

意味のズレや、文脈に合わない硬さ・柔らかさが生じてしまったNG例です。情報の区別を明確にするため表で整理します。

NGな言い換え例 不自然な理由と改善案
【謝罪時】対応するにあたり、確認が漏れておりました。 謝罪の場面で「するにあたり(直面して)」を使うと、責任を回避しているような冷たい印象を与える。「対応時に確認が漏れておりました」と事実だけを端的に述べる。
【日常チャット】ランチに行くに際して、お店を決めよう。 単なるランチという日常的な行為に「に際して」は硬すぎて不自然極まりない。「ランチに行く前に、お店を決めよう」が適切。
【マニュアル】ボタンを押すにあたり、画面を確認してください。 マニュアルは客観的な事実や手順を伝えるもの。「ボタンを押す前に」や「ボタンを押す際は」と、純粋な時間やタイミングを示す言葉に変更する。

とくに謝罪やトラブル報告の場面での使用には注意が必要です。

「〜するにあたり、不具合が発生しました」と書くと、まるで他人事のように聞こえることがあります。「〜の作業中に不具合が発生しました」と、時間軸と状況を正確に伝える言葉を選んでください。

「するにあたり」の言い換えに関するよくある質問

言葉の使い分けに関して、読者が疑問に抱きやすいポイントをQ&A形式でまとめました。

「するにあたり」と「するにあたって」の違いは何ですか?

意味は全く同じですが、フォーマルさの度合いが異なります。「するにあたり」のほうが文章語で、硬く改まった印象を与えます。公式な文書や目上へのメールに適しています。一方、「するにあたって」はやや口語的(話し言葉)な響きがあり、社内の会議や親しい間柄での会話、少し柔らかいトーンのメールなどで自然に馴染みます。

目上の人に「するにあたり」を使っても失礼になりませんか?

失礼にはなりません。むしろ「するにあたり」は改まった表現なので、目上の人や取引先に対して使うのに適した言葉です。より丁寧にしたい場合は、文末を「〜するにあたり、ご相談がございます」のように敬語で整えるか、「〜するにあたりまして」と、接続詞自体を丁寧な形にするとさらに印象が良くなります。

レポートや論文で使える客観的な言い換えはありますか?

「するにあたり」は筆者の「向かう姿勢」という主観が混じるため、客観性が求められるレポートや論文には不向きな場合があります。その場合は「〜する場合」「〜する段階において」「〜の過程で」「〜に先立ち」といった、純粋な時間軸や状況を示す言葉に言い換えると、論理的で知的な文章に仕上がります。

「するにあたりまして」は正しい敬語表現ですか?

はい、正しい表現です。「あたり」に丁寧語の「ます」を接続した形で、ビジネスメールや挨拶などで頻繁に使われます。ただし、「〜するにあたりましては」と長くしすぎると文章のリズムが悪くなることがあるため、一文が長くなる場合は「〜するに際しまして」や「〜する上で」など、よりすっきりした表現への変更も検討してください。

「〜を始めるにあたり」のより良い言い換え表現はありますか?

文脈によりますが、ビジネスシーンであれば「〜の開始に先立ちまして」「〜の導入にあたり」「〜のキックオフに際して」などが適しています。「始める」という和語を「開始」「導入」といった漢語の名詞に置き換えることで、よりプロフェッショナルで引き締まった印象を相手に与えることができます。

「するにあたり」の言い換えまとめ

「するにあたり」という言葉は、物事に向かう真面目な姿勢を示す便利な言葉ですが、それゆえに多用しすぎると文章全体が重く、よそよそしいものになってしまいます。

行動の「前」なのか「同時」なのか。その出来事は日常的なのか、それとも特別なイベントなのか。そして、メールを読む相手は誰なのか。

目的と状況に合わせて「する際」「する前に」「する上で」「するに際して」「先立ちまして」などへ自在に言い換えることで、あなたの伝えるメッセージはより正確で、相手に寄り添う体温のあるものに変わります。

とくに依頼やお願いをするような気を使う場面こそ、適切なつなぎ表現を選び、スムーズなコミュニケーションを築いていってください。