「同時に」の言い換えで文章が変わる!2つの意味を使い分ける類語

文章を書いているときや仕事の依頼をするとき、「Aと、同時にBもお願いします」「これはメリットであると同時にデメリットでもあります」のように、つい「同時に」という言葉を多用していませんか。

「同時に」は、2つの物事が同じタイミングで起こることや、2つの性質が併存していることを示す便利なつなぎ言葉です。しかし、使いすぎると文章が稚拙になったり、どちらが重要なのかという優先順位がぼやけてしまったりします。

「同時に」の代表的な言い換え候補には、「並行して」「併せて」「かつ」「それとともに」などがあります。

この記事では、時間的な同時性と論理的な並列性という2つの意味合いに応じて、「同時に」を適切に言い換える方法や、ビジネスメール・レポートでそのまま使える例文を詳しく解説します。

「同時に」の言い換え表現を一覧で紹介

「同時に」を言い換えるためには、自分が「タイミングが同じであること」を伝えたいのか、それとも「Aであることに加えて、Bという側面もあること」を伝えたいのかを整理することが大切です。

まずは、すぐに使える「同時に」の言い換え候補を一覧で確認しておきましょう。

まず使える意味別の言い換え候補

「同時に」には、大きく分けて「時間的な同時」と「論理的な並列・追加」の2つの役割があります。

それぞれの役割に応じた言い換え候補は以下の通りです。

  • 時間的に同じタイミングであることを伝えたいとき:並行して、同時期に、一斉に、〜の傍ら(かたわら)、〜しつつ
  • 別の情報や条件を一緒に取り扱うとき:併せて、一緒に、同封して、まとめて
  • 2つの性質や事実が並列しているとき(論理):かつ、それとともに、および、ならびに、くわえて
  • 対照的な側面を強調したいとき:その一方で、〜である反面、〜と裏腹に

ニュアンスと硬さの言い換え早見表

言葉の持つニュアンスや硬さに合わせて適切な表現を選べるよう、早見表にまとめました。

文章のトーンや相手との距離感に合わせて使い分けてみてください。

言い換え候補 適したシーン 与える印象・ニュアンス
並行して ビジネス・タスク管理 2つの作業を別々のラインで同時に進めている実務的な印象。
併せて 案内文・メール メインの用件に、もう一つの用件を「添える」丁寧な印象。
かつ レポート・契約書 「Aであり、なおかつBである」という厳しい条件や論理を示す硬い表現。
それとともに 論文・解説文 ある事象の進行と連動して、別の事象も起きている客観的な響き。
その一方で 比較・分析 光と影のように、相反する2つの側面が存在することを論理的に対比する。
〜の傍ら プロフィール・経歴 本業(メイン)がありつつ、別の活動(サブ)も行っている情景が浮かぶ。

「同時に」の言い換えを選ぶポイント

「同時に」を別の言葉に置き換える際は、文脈が求めている意図に合わせることが重要です。

ここでは、言い換えの精度を上げるための3つのポイントを解説します。

「時間の同時」か「論理の並列」かを見極める

最も重要なのは、自分がどの意味で「同時に」を使っているかを自覚することです。

「システム移行と同時に、マニュアルも作成する」という文は、「同じ期間に2つの作業を行う(時間)」という意味ですから、「システム移行と並行して、マニュアルも作成する」が適切です。

一方、「彼は優秀なエンジニアであると同時に、優れた経営者でもある」という文は、「2つの性質を兼ね備えている(論理)」という意味です。この場合は「彼は優秀なエンジニアであり、かつ優れた経営者でもある」と言い換えるのが自然です。ここを間違えると、文章の論理が破綻してしまいます。

相手との関係性や文章のフォーマル度に合わせる

日常会話や親しい同僚とのチャットなら、「Aと同時にBもやっておくね」を「AのついでにBもやっておくね」や「AをしながらBも進めるよ」と言い換えるだけで十分です。

しかし、社外の取引先に対して「ついでに」は失礼にあたります。「Aの件につきましても、併せてご対応いただけますと幸いです」のように、相手に負担を感じさせないクッション性のある言葉を選ぶ必要があります。

優先順位を明確にしたいときは言い換えに注意する

「Aと同時にBも進める」という表現は、AとBの重要度が50:50に見えてしまいます。

ビジネスの現場では、リソースの配分上、どちらかがメインであることがほとんどです。もしAがメインの業務であれば、「Aを最優先で進めつつ、余力でBも並行して進める」など、主従関係を明確にする言葉を補うことで、読み手の誤解を防ぐことができます。

「同時に」の意味とニュアンス

「同時に」という言葉の輪郭を再確認しておきましょう。

この言葉が持つ曖昧さを理解することで、よりシャープな言い換えが可能になります。

「同時に」が持つ2つの基本的な意味

「同時に」という言葉には、辞書的な意味として以下の2つがあります。

  1. 同じ時刻、同じ時期に物事が行われること。(例:スタートの合図と同時に走り出す)
  2. ある事柄が、別の事柄としての性質や側面も併せ持っていること。(例:この薬はよく効くと同時に、副作用も強い)

1つ目は「タイミングの一致」であり、2つ目は「性質の共存」です。多くの場合、私たちはこの2つを無意識に混ぜて使っていますが、文章に書き起こすときは明確に切り分ける必要があります。

言い換えるときに残すべき印象と削るべき曖昧さ

「同時に」という言葉は、「2つのものが存在している」という全体像をふんわりと伝えるには便利ですが、「どのように存在しているのか」という具体性が欠けています。

たとえば、「品質向上と同時にコスト削減を目指す」という目標は聞こえは良いですが、具体的にどうやるのかが見えません。

これを「品質向上を目指す。その一方で、無駄な工程を見直してコスト削減を図る」と言い換えることで、「相反する難しい課題に両方向から取り組む」という力強い印象を残すことができます。曖昧な「同じくらい」というニュアンスを削り、関係性を明確にすることが言い換えの目的です。

「同時に」のシーン別の言い換え例と解説

ここからは、シーン別に「同時に」を使った文と言い換えた文を比較してみましょう。

状況に応じた言葉選びのヒントにしてください。

ビジネスメールでタスクの同時進行を伝える場面

複数の業務を一度に進めることを伝える際、「同時に進めます」と言うと、少し大雑把で計画性がないように聞こえることがあります。

実務的な響きを持たせる言葉に置き換えましょう。

  • 言い換え前:デザイン制作と同時に、システムの構築も進めてまいります。
  • 言い換え後:デザイン制作と並行して、システムの構築も進めてまいります。

「並行して」を使うことで、2つの異なるラインの作業が、それぞれ計画的に同時進行しているというプロフェッショナルな印象を与えられます。

企画書や案内で複数の情報を一緒に伝える場面

お客様に複数の資料を送ったり、複数の要件を案内したりする際の「同時に」は、より丁寧な言葉に変換します。

  • 言い換え前:見積書と同時に、最新のカタログもお送りします。
  • 言い換え後:見積書と併せて、最新のカタログもお送りいたします。

「併せて(あわせて)」は、メインの用件(見積書)にサブの用件(カタログ)を添えるという謙虚なニュアンスがあり、ビジネスメールや案内状で非常に重宝する表現です。

レポートや論文で論理的な追加を記述する場面

レポートや論文では、口語的な「同時に」を多用すると、論理の構造が緩く見えてしまいます。

  • 言い換え前:この素材は軽くて、同時に耐久性も高いという特徴がある。
  • 言い換え後:この素材は軽量であり、かつ耐久性にも優れているという特性を持つ。

「かつ」という接続詞を使うことで、「A条件とB条件の両方を満たしている」という論理的な厳密さが生まれ、文章に説得力が出ます。

日常会話で「〜のついでに」と軽く伝える場面

社内のチャットや親しい相手とのやり取りでは、硬すぎる表現はかえって不自然です。

  • 言い換え前:コンビニに行くのと同時に、郵便も出してくるよ。
  • 言い換え後:コンビニに行くついでに、郵便も出してくるよ。

「〜のついでに」や「〜がてら」を使うことで、行動の負担が軽いことを相手に伝えられ、スムーズなコミュニケーションが図れます。

「同時に」の言い換え例文比較

さらに実践的な場面を想定して、言い換えの比較表を見ていきましょう。

文脈によって最適な言葉が異なることがわかるはずです。

社外取引先へ送る自然なOK例

取引先へのメールでは、相手に配慮した丁寧な表現が求められます。

状況 言い換え前(同時にを使用) 言い換え後・OK例
書類の送付 請求書と同時に、領収書も郵送いたしました。 請求書に同封して、領収書も郵送いたしました。
日程調整の依頼 次回のお打ち合わせ日程と同時に、参加者もお知らせください。 次回のお打ち合わせ日程と併せて、参加者もお知らせいただけますと幸いです。
新サービスの案内 機能が追加されたと同時に、料金もお得になりました。 新機能の追加に伴い、料金プランもよりお得に改定いたしました。

意図がぼやけてしまう避けたいNG例

言い換え言葉の選び方を間違えると、かえって意味が通じにくくなることがあります。

状況 言い換えのNG例 NGの理由と正しい言い換え
作業の依頼 Aの作業とかつBの作業もお願いします。 「かつ」は状態や条件を示す言葉であり、作業の依頼には不自然。正しくは「Aの作業と並行してBの作業も〜」。
対照的な事象 売上が伸びた。併せて、クレームも増加した。 「併せて」は同方向の追加を示すため、ネガティブな事実の接続には不向き。正しくは「その一方で、クレームも〜」。
瞬間的な出来事 ドアが開くと並行して、彼が飛び出してきた。 「並行して」は継続的な動作に使う言葉。瞬間的な動作には不自然。正しくは「ドアが開くやいなや、彼が〜」。

言い換え前と言い換え後の比較

文章全体の中で「同時に」を言い換えると、どのようにリズムが変わるのかを確認します。

  • 言い換え前:新規プロジェクトの立ち上げを行っています。同時に、既存システムの保守も行っています。同時にメンバーの採用活動も進めており、リソースが不足しています。
  • 言い換え後:新規プロジェクトの立ち上げと並行して、既存システムの保守を行っています。くわえて、メンバーの採用活動も進めているため、リソースが不足している状況です。

「同時に」を連発すると単調で計画性がないように見えますが、「並行して」と「くわえて」を使い分けることで、業務の構造が立体的に伝わり、リソース不足という結論への説得力が増しています。

「同時に」に近い言葉との違いと使い分け

「同時に」の言い換え候補には、似たような意味を持つ言葉がいくつかあります。

それぞれの微妙なニュアンスの違いを理解しておきましょう。

「並行して」と「同時並行で」の違い

「並行して」は、2つ以上の物事が同じ時期に進行していることを指します。

「同時並行で」は、これをさらに強調した表現ですが、ビジネスシーンで多用すると少し大げさな印象を与えます。「同時」と「並行」で意味が重複しているという指摘もあるため、基本的にはスッキリと「並行して」を使う方が、洗練された大人の文章になります。

「併せて」と「加えて」の違い

どちらも「追加」を意味しますが、ニュアンスが異なります。

「併せて」は、2つのものを「一つのセットとしてまとめる」ニュアンスです。「資料Aと併せて資料Bもお持ちください」のように使います。

「加えて」は、「すでに存在するベースの上に、さらに別の要素を上乗せする」ニュアンスです。「大雨に加えて、強風も吹き始めた」のように、程度がさらに増す状況で使われます。

迷ったときの選び方と手順

どの言葉に言い換えるべきか迷ったときは、以下の手順で思考を整理してみてください。

  1. 「時間」の話か、「論理」の話か?
    →時間なら2へ。論理なら3へ。
  2. 時間:それは継続的な作業か、瞬間的な出来事か?
    →継続的作業なら「並行して」。瞬間的なら「〜するやいなや」「一斉に」。
  3. 論理:それは同方向の追加か、対照的な事実か?
    →同方向なら「かつ」「併せて」。対照的なら「その一方で」「〜である反面」。

この基準を持つだけで、言葉選びに迷う時間が大幅に減るはずです。

「同時に」の多用が引き起こす問題点

最後に、「同時に」という言葉に潜むリスクについて触れておきます。

ビジネスの現場において「同時に」を多用することは、「優先順位からの逃げ」と受け取られる危険性があります。

「売上拡大と同時に、コスト削減も行います」「スピードアップと同時に、品質の向上も図ります」

これらはスローガンとしては美しいですが、現場の人間からすると「結局、どっちを優先すればいいの?」と混乱を招きます。二兎を追うニュアンスが強くなり、リソースが分散してしまうのです。

本当に伝えたいメッセージがあるなら、「まずは品質の向上を最優先とする。そのうえで、可能な範囲でスピードアップも図る」のように、順番や主従関係を明確に言葉にする勇気を持つことが、ビジネスライティングにおける真の力となります。

「同時に」の言い換えに関するよくある質問

「同時に」と「一緒に」はどう使い分ければよいですか?

「同時に」は「タイミングが同じであること」を強調するやや客観的な表現です。「一緒に」は「空間を共にしている」「協力して行う」というニュアンスが強く、よりカジュアルで親密な印象を与えます。ビジネスで「一緒に進めましょう」と言うと協調性が伝わりますが、客観的な事実を述べるレポートでは「同時に発生した」とする方が適切です。

履歴書や職務経歴書で「同時に〜も行いました」は使ってよいですか?

使用すること自体は問題ありませんが、多用すると「あれもこれも手を出して、どれも中途半端なのでは」という印象を与えるリスクがあります。「営業活動に従事する傍ら、新人教育のリーダーも兼任しました」や「Aプロジェクトを主導しつつ、Bの改善にも並行して取り組みました」など、主務と兼務のバランスが伝わる言葉に言い換えると、より計画的で優秀な印象を与えられます。

「同時に」を敬語表現にするにはどうすればよいですか?

「同時に」という副詞自体に敬語の形はありません。しかし、前後を丁寧な言葉で整えることで印象を良くできます。例えば「書類の提出と同時に、データも送ってください」は、「書類のご提出と併せて、データもお送りいただけますようお願い申し上げます」と言い換えることで、ビジネスにふさわしい丁寧な表現になります。

目上の人に「同時に進めてください」と依頼するにはどう言い換えますか?

目上の人に「同時に進めて」と依頼するのは、指示的で失礼にあたる場合があります。「お手数をおかけしますが、Aの件と並行して、Bの件につきましてもご進行いただけますと幸甚です」のように、「並行して」を使いつつ、依頼のクッション言葉を添えるのがマナーです。

「同時に」の代わりに「かつ」を使うと不自然になりますか?

「かつ」は「Aであり、なおかつBである」という論理的な条件や並列を示す硬い言葉です。そのため、「テレビを見るとかつご飯を食べる」のような日常的な動作に使うと非常に不自然になります。「かつ」は、契約書や論文、厳密な条件を示すビジネス文書などに限定して使用するのが無難です。

「同時に」の言い換えまとめ

「同時に」は、2つの物事が同じタイミングで起きることや、複数の性質が並列していることを示す便利なつなぎ表現ですが、頼りすぎると文章が曖昧になり、優先順位がぼやけてしまいます。

相手に伝えたい意図に合わせて、以下のように言い換えてみましょう。

  • 複数のタスクや作業を同じ時期に進めるときは「並行して」
  • 案内や送付物など、別の情報を一緒に取り扱うときは「併せて」
  • レポートなどで論理的な条件を追加するときは「かつ」「それとともに」
  • 対照的な2つの側面を強調するときは「その一方で」「〜である反面」

そして、ビジネスの現場では「優先順位を明確にするために、あえて『同時に』を避ける」という選択肢を持つことも重要です。

今回ご紹介した言い換え表現を意識して使い分け、より明確で洗練された文章作成に役立ててください。