文章を書くときや挨拶をするとき、文頭で「今年は」と切り出すことは多いですよね。
「今年の目標は」「今年の売上は」「今年もお世話になりました」。
しかし、ビジネスシーンや公式な文書で「今年」を連発すると、少しカジュアルすぎたり、稚稚な印象を与えたりしてしまうことがあります。
「今年」の自然な言い換えは、相手との関係性や文章の硬さに合わせて「本年」「当年」「今年度」などを適切に使い分けることが正解です。
この記事では、最短で使える言い換え候補から、ニュアンスの微細な違い、文を切り出すつなぎ表現としての活用法、そして具体的な例文までを徹底的に解説します。
まずは、記事全体の要点を先出ししてご紹介します。急いで言い換え表現を探している方は、以下のリストを参考にしてください。
- ビジネスメールや挨拶状での言い換え:本年(ほんねん)
- 報告書や公式文書での言い換え:当年(とうねん)
- 4月区切りなど年度を指す場合の言い換え:今年度(こんねんど)、本年度(ほんねんど)
- この記事でわかること:場面に合わせた「今年」の選び方、具体的なOK・NG例文、「本年」と「当年」など類語との細かいニュアンスの違い
「今年」の言い換え表現を一覧で紹介
「今年」を別の言葉で表現する場合、まずはそれが社外への挨拶なのか、社内の報告書なのか、それとも日常のカジュアルな会話なのかを明確に切り分ける必要があります。状況に応じた最適な言葉を選ぶことで、文章の説得力と誠実さが格段に向上します。
すぐ使えるビジネス・日常向けの言い換え候補
言葉を探す手間を省くため、そのまま使える具体的な候補をカテゴリ別に列挙します。
自分の今の状況に最も近いものを選んで、文章に当てはめてみてください。
- 本年(ほんねん):ビジネスメールや挨拶状、年賀状などで使われる最も一般的で丁寧な表現。
- 当年(とうねん):報告書や論文など、客観的な事実を述べる公式文書に適した硬い表現。
- 今年度(こんねんど):4月から翌年3月までなど、組織の事業年度や学校の年度を指す表現。
- 本年度(ほんねんど):「今年度」をよりフォーマルにした表現。
- 当年度(とうねんど):「本年度」と同様だが、より事務的で客観的な事実を述べる表現。
- 年内(ねんない):「今年中に」という意味合いで、期限や期間の目安を示す表現。
- 本年中(ほんねんじゅう):「今年中」を丁寧に表現した言葉。
- 西暦・和暦(〇〇年):履歴書や契約書など、誤解を招いてはいけない公的な書類での表現。
ニュアンス別の言い換え早見表
言葉の持つ細かな温度感や、適した場面を一目で把握できるよう表に整理しました。
相手との距離感を測り違えないための指標として活用してください。
| 言い換え候補 | フォーマル度 | ニュアンスと適した場面 |
|---|---|---|
| 本年 | 高 | 取引先へのメール、年賀状、スピーチなど、相手への敬意を示す場面。 |
| 当年 | 高 | 社内報告書、決算書、論文など、客観的なデータや事実を記す場面。 |
| 本年度 | 高 | 1月~12月の暦年ではなく、事業年度や学校年度を基準に話す場面。 |
| 年内 | 中 | 「今年の年末までに」という期限を提示する場面。 |
| 〇〇年(西暦/和暦) | 最高 | 履歴書や契約書など、いつ読んでも時期がずれない正確性が必要な場面。 |
「今年」の言い換えを選ぶポイント
単に意味が似ているからという理由だけで言葉を入れ替えると、前後の文脈から浮いてしまったり、事実関係に誤解が生じたりすることがあります。言い換える際は、期間の定義と文章全体のトーンを意識することが不可欠です。
「年(暦年)」と「年度」の違いに注意する
「今年」を言い換える際に最も注意すべきなのが、「年」と「年度」の境界線です。
「年(暦年)」は、1月1日から12月31日までの1年間を指します。そのため「本年は」といえば、このカレンダー通りの1年を意味します。
一方で「年度」は、日本の多くの企業や学校では4月1日から翌年3月31日までを指します。もしあなたが「今年の売上目標は」と4月区切りの数字について語りたい場合、「本年の」と言い換えると、1月〜12月の数字なのか、4月〜翌3月の数字なのか、聞き手が混乱してしまう可能性があります。
事業や学校の区切りについて話す場合は、「本年度」「当年度」を選ぶのが正解です。
相手との関係性やフォーマル度で決める
言葉選びの基本は、その言葉を「誰に向けて発信しているのか」を再確認することです。
取引先への新年の挨拶や、顧客に向けた公式なお知らせであれば、「本年」といった重みのある言葉が適しています。相手に敬意と緊張感を持って接していることが伝わります。
一方で、長年一緒に働いている同僚や、頻繁に連絡を取り合う担当者に対して「当年におきましては」などと送ると、心理的な距離を遠く感じさせ、機械的な印象を与えてしまいます。こうした場面では、そのまま「今年は」や「今年度は」と表現する方が自然に響きます。
言葉の堅苦しさが、かえってコミュニケーションの壁になっていないかを見極めることが重要ですね。
文を切り出す「つなぎ表現」として活用する
「今年」という言葉は、単なる時期を示す名詞であるだけでなく、本題に入る前や話題を転換する際の潤滑油、つまり「つなぎ表現」として極めて優秀な役割を果たします。
「今年は新しいプロジェクトが始まります」という文において、「今年は」は新しい話題への導入機能を担っています。この機能を別の言葉で代替し、より自然に接続するならどうなるでしょうか。
ビジネスの文脈であれば、「本年におきましては、新規プロジェクトが始動いたします」と展開できます。報告書の文脈であれば、「当年度につきましては、以下の課題が見られました」と前置きすることで、スムーズに本題に入ることができます。
文脈を美しく接続するためのつなぎ言葉として、どの類語が最も自然なリズムを生み出すかを意識して選んでみてください。
「今年」の意味と細かなニュアンス
言葉の言い換えを成功させるためには、元の言葉の輪郭を正確に捉えておく必要があります。「今年」という言葉が持つ独自のニュアンスを解剖してみましょう。
「今年」が持つ基本的な意味とカジュアルさ
「今年」とは、現在自分がいるこの1年間を指す最も平易な言葉です。
日常会話やカジュアルなコミュニケーションにおいて、最も頻繁に使われます。口馴染みがよく、親しみやすい反面、ビジネス文書や公式な場では「ややくだけすぎている」「客観性に欠ける」という印象を持たれがちです。
友人同士の会話で「本年はよろしく」と言わないように、ビジネスの場では「今年はよろしく」とは言わない。この線引きを明確にすることが、言い換えの第一歩です。
言い換えるときに意識すべき公的な印象
「今年」を「本年」や「当年」に言い換える最大の目的は、文章に「公的な印象」「客観性」「礼儀正しさ」を付与することです。
たとえば、「今年の目標」を「本年の目標」に変えるだけで、個人の思いつきではなく、組織としての公式な意志であるかのような重みが出ます。また、「今年の売上」を「当年の売上」に変えることで、感情を交えない客観的なデータとして数字を扱うことができます。
言い換え先の言葉が持つ「温度感」を意識し、自分の文章にふさわしい温度の言葉を選んでください。
「今年」のシーン別の言い換え例
ここでは、実際のシチュエーションを想定し、どのような言い換えが最も効果的かを探っていきます。
ビジネスメールや挨拶状・年賀状の場面
ビジネスシーンで最も頻出するのが、社外に対する挨拶やメールの文脈です。
この場面では、迷わず「本年(ほんねん)」を使用します。「本年もよろしくお願い申し上げます」「本年におきましても、変わらぬご愛顧を」といった表現は、ビジネスにおける定番中の定番です。
「今年」を使うと少し馴れ馴れしく、「当年」を使うと事務的で冷たい印象を与えてしまうため、敬意と温かみを両立できる「本年」が最適解となります。
報告書や公式文書、レポートの場面
主観を排し、客観的な事実やデータを述べるべきレポートや決算書、議事録などでは、感情的な表現は避けなければなりません。
「今年の利益は」と書くよりも、「当年の利益は」や「当年度の利益は」と記述します。「当年」や「当年度」は、報告者が属する組織のその年・その年度を客観的に指し示す言葉であり、データ分析や状況報告において非常にプロフェッショナルな印象を与えます。
履歴書や職務経歴書など採用に関わる場面
就職や転職の際に提出する履歴書や職務経歴書では、言葉選びに特別な注意が必要です。
採用担当者が書類を読むのは、あなたが書いた直後とは限りません。数ヶ月後に読まれる可能性もあります。そのため、「今年資格を取得しました」と書くと、いつのことなのか正確に伝わらなくなってしまいます。
このような公的な書類においては、「今年」や「本年」といった相対的な表現は避け、「202X年〇月に取得」「令和〇年〇月に従事」といったように、西暦や和暦を使って絶対的な時期を明記するのが鉄則です。
「今年」の言い換え例文
理屈を並べるよりも、実際の例文を比較するほうが直感的に理解できます。使ってよい例と避けるべき例を整理しました。
相手にまっすぐ伝わる自然なOK例
文脈に合わせて自然に溶け込んでいる例文です。そのままコピーして使っていただけます。
- 【年賀の挨拶】旧年中は大変お世話になりました。本年も変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。
- 【事業計画書】本年度におきましては、新規市場の開拓を最優先課題として取り組みます。
- 【実績報告】当年の売上高は、前年対比で120%の成長を記録いたしました。
- 【スケジュールの提示】本プロジェクトのシステム移行につきましては、年内の完了を目指しております。
- 【個人の振り返り】この一年を振り返りますと、皆様の温かいご支援に助けられた日々でした。
違和感を与えてしまう避けたいNG例
言葉の意味を取り違えたり、フォーマル度を見誤ったりした不自然な例文です。
- 【NG】取引先への新年のメールで「当年もよろしくお願いいたします」
→ 「当年」は事務的で冷たい印象を与えるため、挨拶には不向きです。「本年も」が正解です。 - 【NG】4月決算の報告で「本年の売上目標は〜」
→ 4月〜翌3月までの数字であれば、「本年度の」とすべきです。1月〜12月と誤解されます。 - 【NG】履歴書の自己PRで「本年、〇〇のプロジェクトリーダーを務めました」
→ 読む時期によってはいつのことかわかりません。「202X年〇月に」と明確に書きましょう。
言い換え前と言い換え後の印象比較
元の文からどのように印象が変化するのか、具体的に比較してみましょう。
| 言い換え前(今年) | 言い換え後 | 印象の変化 |
|---|---|---|
| 今年もよろしくお願いします。 | 本年もよろしくお願い申し上げます。 | くだけた印象がなくなり、相手への敬意とビジネスマンとしての礼儀正しさが伝わる。 |
| 今年のデータによると。 | 当年のデータによりますと。 | 個人的な見解ではなく、客観的で事務的な公式データとしての重みが出る。 |
| 今年中に終わらせます。 | 年内の完了を予定しております。 | 期限が明確になり、よりプロフェッショナルで計画的な印象になる。 |
「今年」に近い言葉との違い
日本語には似たような意味を持つ言葉が無数に存在します。ここでは、特に混同しやすい言葉同士の境界線を明らかにします。
「本年」と「当年」のニュアンス比較
「今年」の代表的な言い換えである「本年」と「当年」。どちらも同じ「いまの年」を指しますが、使われるベクトルが異なります。
「本年」は、話し手(自分)が主体となって「私が生きているこの年」を指す表現です。そのため、挨拶やスピーチなど、人に語りかける場面で「本年もよろしく」と使うのが自然です。
一方の「当年」は、少し距離を置いて「その年」を客観的に指し示す表現です。過去の出来事を説明する際に「当年の利益は〜(=その年の利益は)」と使ったり、淡々と事実を述べる報告書で使われたりします。挨拶に「当年」を使うと、相手を突き放したような冷たさを感じさせてしまうのはこのためです。
「今年」と「今年度」を使うべきか迷ったときの選び方
ビジネスにおいて「今年」か「今年度」か迷う場面は少なくありません。
判断に迷ったときは、以下の手順で選んでみてください。
- 話題にしている数字や計画は、1月〜12月の暦年基準か?(Yesなら「本年」「今年」)
- 話題にしている数字や計画は、4月〜翌3月などの事業年度・学校年度基準か?(Yesなら「本年度」「今年度」)
特に売上、予算、採用計画、人事異動などの話題は、企業によって「年度」で動いていることがほとんどです。年度基準で動いている事柄を「今年」と表現してしまうと、期末の認識にズレが生じ、重大なミスにつながる恐れがあります。
ビジネスでは原則として「年度」を意識し、「本年度」を積極的に使うことをおすすめします。
「今年」の言い換えに関するよくある質問
言い換え表現を探す際に、よく抱く疑問とその回答をまとめました。
「今年」のビジネスメール向け言い換えは?
最も確実で丁寧なのは「本年(ほんねん)」です。年始の挨拶などで「本年も何卒よろしくお願い申し上げます」と使うのが一般的です。もし4月始まりなどの年度の話題であれば「本年度」を使用してください。
「本年」と「当年」の違いは何ですか?
「本年」は主観的で相手に語りかける挨拶や手紙に向いており、温かみや敬意を含みます。「当年」は客観的で事務的な響きがあり、決算書や報告書などで事実やデータを淡々と述べる際に向いています。
「今年」と「今年度」の使い分け方は?
「今年」は1月1日〜12月31日の暦年を指します。「今年度」は、組織が定めた1年間の区切り(日本では4月1日〜翌3月31日が多い)を指します。話題にしている内容がどちらの区切りに基づいているかで使い分けてください。
履歴書で「今年」を表現するにはどう書けばいいですか?
履歴書や職務経歴書などの公的書類では、「今年」や「本年」といった相対的な表現は避け、「202X年〇月」や「令和〇年〇月」といったように、西暦または和暦で絶対的な時期を正確に記入してください。
「今年一年」を丁寧に言い換えるには?
ビジネスシーンであれば「本年」や「本年一年間」と表現します。年末の挨拶などで少しエモーショナルな感謝を伝えたい場合は、「この一年」や「旧年中(※年が明けた後に前年を振り返る場合)」といった言葉も効果的です。
「今年の目標」をビジネスで言い換えるなら?
「本年の目標」とするのが一般的です。企業活動としての目標であれば、「本年度の事業目標」や「当年度の目標」とすると、より組織的で公式な印象を与えることができます。
「今年」の自然な言い換えまとめ
私たちが何気なく使っている「今年」という言葉。それを相手や状況に合わせて的確に言い換えることは、単なる語彙力のひけらかしではなく、ビジネスパーソンとしての正確さと配慮そのものです。
取引先への丁寧な挨拶には「本年」を。客観的なデータの報告には「当年」を。組織の事業計画について語るときは「本年度」を。そして、公的な書類には「西暦・和暦」を。
言葉の選択ひとつで、文章のプロフェッショナル度や相手に与える信頼感は劇的に変わります。今回ご紹介した言い換えの候補や、つなぎ表現としての活用法をヒントに、あなたの意図が最もクリアに伝わる言葉を見つけてみてください。
明日のメール一通、次の報告書から、さっそく変化を試してみてはいかがでしょうか。